高齡者のRSウイルス感染症 について

高齡者のRSウイルス感染症 について

高齡者のRSウイルス感染症
について

Symptoms

症状

RSウイルスに感染すると、4~5日の潜伏期間(症状のない期間)を経て、発熱、せき、鼻水などの上気道炎の症状がみられるようになります。通常、上気道炎の症状が数日続いた後に快方に向かう場合が多いですが、その後に感染が下気道(気管・気管支等)に及ぶことで、ゼーゼーヒューヒューといった喘鳴や呼吸困難など下気道炎による症状がみられる場合もあります1)

とくに、高齢者や慢性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などの慢性呼吸器疾患、他に基礎疾患がある方(表)では、RSウイルス感染症により重大な結果につながる原因になる場合があります2,3)。そのため、重症化のリスクが高い方では、RSウイルス感染症に注意する必要があります。
多数の高齢者や慢性心疾患、慢性呼吸器疾患などがある方がいる高齢者施設などでは、RSウイルス感染症の集団発生が問題となる場合があるため注意が必要です4)

表 RSウイルス感染症の
重症化リスクが高い方2)
● 高齢者
● 慢性心疾患または慢性呼吸器疾患のある成人
● 免疫系が低下している成人
● 他に基礎疾患がある成人
● 老人ホームや介護施設に入所している成人

Infection

感染、流行について

高齢の方など、RSウイルス感染症の重症化リスクを有する方が多い地域や施設では、RSウイルス感染症に注意する必要があるため、その流行の把握は大切です1)
一方、国内では、RSウイルス感染症と診断された幼小児の患者数が定期的に報告されていますが、成人の感染者数を把握することは困難です2)。そのため、日ごろからの予防が大切と考えられます3)

diagnosis

診断と治療

RSウイルス感染症の診断

高齢者のRSウイルス感染症に特徴的な症状はないため、症状からRSウイルス感染症と診断することは困難とされています。また、新生児・乳幼児のRSウイルス感染症の診断に主に用いられる検査キットでは、成人でのRSウイルスの検出が難しいため、高齢者のRSウイルス感染症の診断は難しいとされています1)

RSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症に対する確立された治療法はありません。そのため、症状をやわらげる対症療法が中心になります1)
なお、RSウイルス感染症による下気道炎等を予防するワクチンがあります。ワクチンの接種が可能かどうかについては先生にご相談ください。

  • 1)国立感染症研究所: 病原微生物検出情報 39(12): 212, 2018

prevention

日常における注意

RSウイルスは飛まつ感染や接触感染により感染します1)
飛まつ感染を予防するためには、せきや鼻水などの症状がみられる子供や大人の方とは、できる限り接触を避ける、またはマスクを付けることが大切です。接触感染を予防するためには、乳幼児が日常的に触れるおもちゃ、手すりなどをこまめにアルコールや消毒剤等で消毒するとともに、手洗いが大切です1)

飛まつ感染

RSウイルスに感染している人がくしゃみや会話をした際に空気中に飛び散ったウイルスを吸い込むことにより感染します1)

  • ※病原体が空気中を漂い、吸い込むことで感染する空気感染ではないので、空気の流れを気にする必要はありません。
飛沫感染
接触感染
ウイルスが付着した手指やドアノブ、手すりなどを触ったりすることによる間接的な接触感染で感染します1)
接触感染