乳幼児のRSウイルス感染症について

乳幼児のRSウイルス感染症について

乳幼児のRSウイルス感染症
について

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RSウイルス感染症の概要や、症状、治療、日常における注意点などについて動画で解説しています。

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Symptoms

症状

RSウイルスに感染すると、潜伏(せんぷく)期間(症状のない期間)の後、発熱、鼻水などの上気道の症状がみられるようになります。約70%の乳幼児では、上気道炎の症状が数日続いた後、快方に向かうと報告されています1)

一方、残り30%の乳幼児ではその後、細気管支炎や肺炎などの下気道炎を引き起こして重症化し、強いせきやゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難により顔色が青白い、唇の色が青紫色になるなどの下気道炎の症状がみられるようになります1)。せき込んで嘔吐し、食事や水分が充分にとれなくなることもあります2)。これらの症状がみられたら、すぐに医療機関への受診を検討ください。

主な下気道炎とその症状

主な下気道炎とその症状

  • *1 細気管支は、気管支が細くなった部分のことを指します。
  • *2 肺胞では、吸い込んだ酸素と体内の二酸化酸素のガス交換が行われます。
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症状

参考)

  • 1)堤裕幸: ウイルス 55(1); 77, 2005
  • 2)堤裕幸 他: 小児内科 49(11), 1625, 2017より作成
  • 3)藤枝幹也 他: 臨牀と研究 77(1): 11, 2000より作成

respite

感染による喘息リスク

RSウイルス感染症と喘息の発症率には関連があると言われています。スウェーデンの報告では、RSウイルス感染症により入院した経験がある小児では、健康な小児と比較して、3歳、7歳、13歳における喘息の発症率が一貫して高かったことが報告されています1~3)

3歳時における喘息発症率の比較1)
3歳時における喘息発症率の比較

対象:1989年12月~1990年4月にRSウイルス感染による細気管支炎で入院した乳幼児47例と性別、年齢、居住地域を合わせた対照の乳幼児93例

方法:患者及びその家族に対する3歳時点の追跡調査によって喘息の発症状況を検討した。3回以上の気管支閉塞を医師が確認した場合を喘息と定義した。

  • 参考 1)Sigurs N. et al.:Pediatrics 95(4):500, 1995
7歳時における喘息発症率の比較2)
7歳時における喘息発症率の比較

対象:1989年12月~1990年4月にRSウイルス感染による細気管支炎で入院した乳幼児47例と性別、年齢、居住地域を合わせた対照の乳幼児93例

方法:患者及びその家族に対する7歳時点の追跡調査によって喘息の発症状況を検討した。3回以上の気管支閉塞を医師が確認した場合を喘息と定義した。

  • 参考 2)Sigurs N. et al.:Am J Respir Crit Care Med 161(5):1501, 2000
13歳時における喘息発症率の比較3)
13歳時における喘息発症率の比較

対象:1989年12月~1990年4月にRSウイルス感染による細気管支炎で入院した乳幼児46例と性別、年齢、居住地域を合わせた対照の乳幼児92例

方法:患者及びその家族に対する13歳時点の追跡調査によって喘息の発症状況を検討した。3回以上の気管支閉塞を医師が確認した場合を喘息と定義した。

  • 参考 3)Sigurs N. et al.:Am J Respir Crit Care Med 171(2):137, 2005

また、米国の報告では、1歳までにRSウイルスに感染した小児(入院の有無を問わない)においても、健康な小児と比較して、5歳の喘息発症リスクが高かったことが示されています4)

参考)

  • 4)Rosas-Salazar C. et al.: Lancet 401(10389):1669, 2023

infection

感染、流行について

RSウイルス感染症は1年を通じて感染がみられますが、とくに流行がみられる時期があります。RSウイルス感染症にかかることで重症化する場合があることから、その流行を把握することは重要です1)

RSウイルス感染症の流行状況

本邦では、小児科定点に指定された全国約3,000の医療機関から各地域の保健所へ、RSウイルス感染症と診断された患者数が週単位で報告されています。

上記のRSウイルス感染症の全国報告数より、RSウイルス感染症の流行のピークは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前の2018年・2019年では8-9月にかけて観察され、新型コロナウイルス流行中・流行後の2021年・2022年では6-7月にかけて観察されました。
このように、RSウイルス感染症の流行のピークの時期や報告数の多さは毎年同じでない2)ことから、流行を把握することに加えて、日ごろからの予防も大切です。

参考)

  • 1)国立感染症研究所: 病原微生物検出情報 39(12): 1, 2018
  • 2)Olsen SJ et al.: MMWR Morb Mortal Wkly Rep 70(29): 1013, 2021
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RSウイルス感染症の流行状況

diagnosis

診断と治療

RSウイルス感染症の診断

乳幼児でRSウイルス感染症を疑う場合には、インフルエンザウイルスの検査法と同じように、鼻水または鼻の穴に綿棒のようなものを入れ、粘膜をぬぐいとって迅速検査を行います1)
なお、この検査は、入院中の患者さん、外来での診察では1歳未満の乳児、RSウイルス感染症の重症化を抑えるお薬の使用を検討する患者さんに使用する場合のみに保険適用されるため2)、検査に関しては先生にご相談ください。

RSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症に対する確立された治療法はありません。そのため、症状をやわらげる対症療法や呼吸困難を助ける治療が主体になります1)。呼吸困難が強いなどの重症の患者さんは入院して、酸素投与や人工呼吸器で対応します2)
なお、感染対策として、赤ちゃんが生まれる前に、妊娠中の方に接種し、お腹にいる赤ちゃんに胎盤を通じて抗体を移行することで、生後の赤ちゃんをRSウイルスから守るためのRSウイルスワクチンがあります3)。また、赤ちゃんが生まれた後に、赤ちゃんに直接抗体を投与し、RSウイルスのはたらきをおさえる注射薬があります。お薬の使用、ワクチンの接種が可能かどうかについては先生にご相談ください。

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RSウイルス感染症の治療

prevention

日常における注意

RSウイルスは飛(ひ)まつ感染や接触感染により感染します1)

飛まつ感染を予防するためには、せきや鼻水などの症状がみられる年長児や成人とは、できる限り接触を避ける、またはマスクをつけることが大切です1)

接触感染を予防するためには、乳幼児が日常的に触れるおもちゃ、手すりなどをこまめにアルコールや消毒剤等で消毒するとともに、手洗いが大切です1)

飛まつ感染

RSウイルスに感染している人がくしゃみや会話をした際に空気中に飛び散ったウイルスを吸い込むことにより感染します1)

  • ※病原体が空気中を漂い、吸い込むことで感染する空気感染ではないので、空気の流れを気にする必要はありません。
飛まつ感染
接触感染
ウイルスが付着した手指やドアノブ、手すり、おもちゃなどを触ったりすることによる間接的な接触感染で感染します1)
接触感染
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日常における注意